3. 3D細胞培養アッセイ

スフェロイドと
オルガノイドの培養

スフェロイドとオルガノイドの培養

ibidi マイクロパターン上に特定のスフェロイドを形成するNIH-3T3細胞。 直径200 μm接着スポットを有するマイクロスライドVI0.4に細胞を播種し、14日間フロー下で(3 dyn/cm2)培養した。

スフェロイドは、三次元的な非接着環境下で培養することによって、細胞同士が互いに接着し形成される細胞塊です。多分化能を持たず、完全に分化した細胞で構成されています。一般的には、足場のない浮遊状態で作成され、ハンギングドロップ法や浮遊培養法が知れらています。

スフェロイドは自己複製ができず、分化能も持ちません。例外は腫瘍細胞のスフェロイドです。腫瘍細胞は無限増殖能を有するために、それらは分裂し、再生することができます。このため、スフェロイドは、腫瘍細胞の挙動を調べるための有用なモデルと考えられており、大規模薬物スクリーニングなどに用いられます。

マイクロプレート血管新生におけるスフェロイド生成の詳細なプロトコルを知りたい場合には、: AN32:スフェロイドの生成(PDF)を参照ください。

スフェロイドとオルガノイドの培養

スフェロイドは細胞凝集体であり、しばしば癌細胞から作成されます。

スフェロイドとオルガノイドの培養

オルガノイドは、幹細胞に由来し、ミニ器官として培養されます。

オルガノイドは「ミニ器官」と培養される。それらは、成体幹細胞(ASC)または多能性幹細胞(PSC)から生成することができます。三次元マトリックス/スキャフォールド(例えば、Matrigel®やコラーゲン)で培養すると、これらの細胞は臓器特異的な細胞形態に分化し、小さな機能的臓器を形成します。

Sato et al.がLgr5+幹細胞から作成した腸オルガノイドを皮切りに、腸、肝臓、脳、前立腺、腎臓、膵臓、肺、甲状腺など、さまざまな器官からのオルガノイド生成用の多くのプロトコルの確立されました。CRISPRなどを用いて編集することができる点も忘れてはならず、個別化療法、器官形成、薬物スクリーニングに関する研究の強力なツールを提供します。

参考文献 参考文献

Sato T, et al. (2009) Single Lgr5 stem cells build crypt-villus structures in vitro without a mesenchymal niche. Nature 459(7244):262-265. 10.1038/nature07935.
Drost J, Clevers H (2018) Organoids in cancer research. Nat Rev Cancer 18:407–418. 10.1038/s41568-018-0007-6.
Tuveson D, Clevers H (2019) Cancer modeling meets human organoid technology. Science 364(6444):952-955. 10.1126/ science.aaw6985.

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マイクロスライド スフェロイド パフュージョンは、長期スフェロイド培養を可能にする特殊なフローチャンバーです。スライド上には、独自の窪地形状を有するウェルが、1レーンあたり7個 x 3レーン分(計21ウェル)備わっており、そこで細胞が培養できるようになっています。ウェル上部には、培地を灌流させることにより、適切な栄養と酸素を細胞に提供する一方で、灌流に伴うシェアストレスに細胞をさらすことのない形状になっております。

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μ-Slide With Multi-Cell μ-Patternは、スフェロイドおよびオルガノイドを特定の細胞接着スポットに作成することができ、長期培養や高分解能イメージングにも使用できるスライドです。細胞接着スポット周囲のBioinert加工された表面は、完全に細胞接着を阻害するため、細胞懸濁液中の単一細胞は、接着スポットにしか接着できません。このため、細胞は接着スポットで互いに凝集し、特定の領域にスフェロイドを作成することができます。

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Bioinertは、生体分子に対する不活性な表面のことで、細胞や生体分子を接着させない面です。スフェロイド、オルガノイド、浮遊細胞の長期培養、高解像度顕微鏡観察に使用できます。現在、マイクロディッシュ35 mm, highバイオイナートなどで利用可能です。

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マイクロスライド III 3D パフュージョンでは、スフェロイドまたはオルガノイドをゲル上で培養するか、3Dマトリックスに埋め込んで培養することができます。特殊なチャンネル形状により、低流量での灌流が可能になります(例えば、ibidiポンプシステムを使用する場合)。この設定により、最長数週間の長期培養が可能となります。さらに、底面は薄いカバースリップで構成されているため、高解像イメージングにも対応します。

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マイクロスライド アンジオジェネシスまたは マイクロプレート アンジオジェネシス 96ウェルを使用しても、スフェロイドおよびオルガノイドを、ゲルマトリックス上またはゲルマトリックス内での3D培養することができます。高解像イメージングにも対応し、費用対効果の高い3D培養アプリケーションです。ゲル層と比較すると、上部の培地リザーバが大きいため、老廃物の迅速な拡散、効率的な培地供給を可能にします。

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ibidi I型コラーゲン(ラット尾由来)は、ペプシン処理を行っていない天然コラーゲンで、ゲル化したものは、ECMのモデルとして用いられます。重合が速く、3D培養中のゲル内で、細胞分布に偏りを生じにくいのが特徴です。ibidi I型コラーゲン(ラット尾由来)を用いた3Dゲルの調製法についてはAN26:3D細胞培養用I型コラーゲンゲルを参照してください。

3Dマトリックス中の
単一細胞

3Dマトリックス中の単一細胞

マイクロスライド ケモタキシスを用いて、ibidi I型コラーゲン(ラット尾由来)中のLifeActを発現したHT-1080細胞(緑色)。

3D培養は、多くの点で、2D細胞培養よりもin vivo様の培養環境を提供します。3Dゲル内で細胞を培養し、単一の細胞を観察すると、細胞の変形、遊走性、管形成、ECM分解などの多様な生物学的疑問を分析することができます。1種類の細胞だけの培養だけではなく、複数の細胞種を共培養する場合もあり、たとえば、癌細胞の線維芽細胞に対する浸潤挙動などを調べる系も作成することができます。

ゲルマトリックスから細胞を単離する際は、マトリックスを酵素的で分解します(例えば、コラゲナーゼによるコラーゲン)。回収した細胞は、新たなゲルマトリックス中で増殖させたり、DNA、RNA、またはタンパク質を抽出するなど、さらなる解析に使用することもできます。

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ibidi I型コラーゲン(ラット尾由来)は、ペプシン処理を行っていない天然コラーゲンで、ゲル化したものは、ECMのモデルとして用いられます。重合が速く、3D培養中のゲル内で、細胞分布に偏りを生じにくいのが特徴です。ibidi I型コラーゲン(ラット尾由来)を用いた3Dゲルの調製法についてはAN26:3D細胞培養用I型コラーゲンゲルを参照してください。

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マイクロスライド III 3D パフュージョンでは、単一細胞を3Dマトリックスに埋め込むことができます。特殊なチャンネル形状をしており、(例えば、ibidiポンプシステムを使用することで)低流量での灌流が可能です。灌流することにより、静置培養では滞りがちな、酸素と栄養分を十分に供給することができます。このため、最長数週間の長期培養が可能となります。底面は薄いカバースリップボトムであるため、高解像イメージングにも対応します。

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マイクロスライド アンジオジェネシスまたは マイクロプレート アンジオジェネシス 96 Wellは、簡便に3Dゲル中、もしくは3Dゲル上の単一細胞もしくは共培養の細胞観察系を構築することができます。このシステムでは、内部ウェルに作成したゲルの上面で、培地リザーバーと接し、この面を介して迅速かつ容易な培地との物質のやりとりをしている。ibidiポリマー底面だけではなく、もし、必要であれば、カバースリップ厚1.5Hのガラスボトムタイプの製品も入手可能です。

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マイクロスライドI Luer 3Dは、灌流下しながら、3Dゲルマトリックス上もしくはマトリックス中で細胞を培養するために設計されています。スライド上には流路があり、その流路には、3D培養するためのゲルが作成できる3つのウェルが備わっています。灌流する場合、本スライドをibidiポンプシステムなどのポンプに接続し、酸素や栄養などを供給します。細胞極性の研究に最適で、3Dゲルマトリックスと細胞層をコンタクトさせ、3Dゲルマトリックス内に存在する因子により、細胞層の極性化をもたらすような系を組むことができます。また、3Dマトリックス中に癌細胞を埋め込み、白血球を培地とともに流すことで、癌細胞より発せられる物質に誘引される白血球を観察する系を組むことができます。

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マイクロスライド ケモタキシススティッキースライド ケモタクシスは、2Dおよび3D培養下における、細胞の遊走を解析するのに適したスライドです。3D培養に用いたとしても、コラーゲンIゲルやMatrigel®などのゲル構造は、拡散に基づく誘引物質もしくは忌避物質の濃度勾配形成を妨げません。

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マイクロスライド メンブレン イビポアフローは、膜を介した移動および物質のやりとりの研究に使用できるスライドです。静置培養もしくは還流培養下いずれにも使用することができます。

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マイクロ・ディッシュ 35mm、highまたはマイクロスライド 8 Well highなど、ほぼ全てのibidi labwareは、3Dマトリックスを使用することができ、3D培養に使用することができます。

3Dにおける走化性
および遊走アッセイ

走化性アッセイは、走化性物質指向性細胞遊走を分析するために使われてきました。走化性アッセイの際に2D環境で細胞を培養することは、in vivoの状況を反映せず、細胞挙動および遊走結果を見誤る可能性があります。この問題を克服するために、コラーゲン、マトリゲル®、その他のヒドロゲルなどの自然環境を模倣した3Dマトリックスに細胞を埋め込みます。

3Dにおける走化性および遊走アッセイ 3Dにおける走化性および遊走アッセイ 3Dにおける走化性および遊走アッセイ

接着したHT-1080癌細胞の顕微鏡検査と模式図。2D表面上(左)、マイクロスライドケモタキシス上の3DコラーゲンIゲルに埋め込まれている(右)

3Dにおける走化性および遊走アッセイ

HT‐1080癌細胞にトランスフェクフェクションしたLifeAct TagRFPのスピニングディスク共焦点タイムラプス顕微鏡画像。μ‐スライドケモタキシスの3Dコラーゲンマトリックス中を移動。×63油浸レンズ使用

3D走化性アッセイの利点

  • 大部分の細胞種にとって、よりin vivoに近い環境を与えます
  • ECMに似た環境を与えます
  • 接着細胞、浮遊細胞を問わず走化性アッセイが可能

3D走化性アッセイの注意

  • 比較的ゲルの取り扱いが難しい;実験中に制御しなければならないパラメータが多い
  • 細胞がゲル表面もしくは底面付近に付着し、2D表面的な現象を示す可能性がある
  • トラッキング中に、Z軸方向に細胞が移動し、焦点を外れることがある

参考文献 参考文献

Biswenger V, et al. Characterization of EGF-guided MDA-MB-231 cell chemotaxis in vitro using a physiological and highly sensitive assay system. PLoS One, 2018, 10.1371/journal.pone.0203040.

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マイクロスライド ケモタキシススティッキー スライド ケモタキシスは、2Dと3D両方の走化性実験に適しています。濃度勾配は、ゲル構造は、分子拡散による可溶性勾配の形成を阻害せず、コラーゲンIゲルやマトリゲル®などの3Dハイドロゲルを使用することで3D走化性アッセイ系を確立できます。

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フロー培養を組み合わせた
3D細胞培養

間質流

間質流

in vivoでは、多くの細胞が絶えず流れに伴うシェアストレスにさらされています。in vitroの3Dマトリックスで培養する場合でも、非常に緩やかな流れで灌流しながら、増殖培地、試薬・薬剤を提供することにより、より自然な細胞培養条件を実現することができます。

潅流

灌流

チャネルを有するスライドに3Dゲルマトリックスを作成し、ゲルマトリックス内に細胞を埋め込むことで、ゲル上で培地を流すことができます。この系では、流れに伴い運ばれてきた酸素や栄養などが、3Dマトリックス内に拡散し、供給されます。このため、適切な流量を調整することにより、栄養レベルを規定し、長期間の生細胞実験を可能にします。

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